お化けや怪物の登場しない、人の闇を描いた押切ホラーに興味はありませんか?
押切蓮介先生のミスミソウは、他人の命を屁とも思わない連中と、そいつらへの意趣返しを描いた作品です。
倫理観がぶっ壊れている人を痛めつけるには、自分のそれもぶっ壊すしかない。
そんな人たちがつむぐ、サスペンスホラーになっています。ちな、グロ注意。
概要
あらすじ
野咲春花は黒髪ロングの美少女。東京から田舎の学校に転校してきた。
が、いじめのターゲットにされてしまう。
それでも、クラスのイケメン・相場とは仲が良かった。
「この草(三角草)は厳しい冬を耐え抜いた後、雪を割るようにして小さな花が咲く」
「三角草は、おまえみたいだ」とか言って口説いてくる。
数日後、野咲の実家が何者かに放火された。
両親が亡くなり、妹は意識不明の重症を負ってしまう。
登場人物
野咲
今作のヒロイン。いじめっ子もひどいが、問答無用で切り付ける彼女もひどい。メンヘラを引き寄せる能力の持ち主。
相場
今作の王子さま兼ラスボス。イケメン風DV野郎。家族だろうが恋人だろうが、お構いなしに暴力を振るう。おまけにグロ写真が好きとかいう、救いようのない男。
妙子
いじめっ子グループのリーダー。ものすごく陰険だが、一線を越えないくらいの常識は持ち合わせている。好きな子をいじめるタイプ。
佐山
いじめっ子グループの下っ端。妙子のことが大好きで、付き従っていたが暴走。ドン引きした妙子に切り捨てられると、逆恨み襲撃をかます。切れたらヤバいやつ筆頭。
ヤバいやつしかいない。
物語の内容
最初の復讐
両親が亡くなり、妹は意識不明のまま入院。野咲は、おじいちゃんと一緒に暮らすことになる。
それでも、野咲へのいじめは収まらず。彼女は裏山のゴミ捨て場に呼び出される。
そこでいじめっ子たちは、家族が亡くなって辛いだろうからいっそ自殺しろ、とか言ってくる。ついで、野咲の母親が燃えたときはすごかったと言う。
実家に放火したのは、いじめっ子たちだった。
いじめっ子は野咲に灯油をぶっかけ、マッチに火をつけながら口を動かす。
「こんなヒドイ人生は…。早くサヨナラしないとね」
そのとき。
野咲は落ちていたクギを握りしめ、いじめっ子の左目に打ち込んだ。
いじめっ子、ヤバい…。
妙子の最期
いじめっ子グループのリーダー・妙子に電話がくる。相手はグループの下っ端・佐山。いわく、
- ほかのいじめっ子が遺体で見つかった
- 犯人は野咲に違いない
- 次は自分かもしれない
それに対する妙子の返事は、ひどく冷淡。
「…ご愁傷様。…自業自得じゃん…?」そしてガチャ切り。
妙子はそのまま外出。向かったのは野咲のところ。
そこで妙子は土下座謝罪を敢行(かんこう)。一応、許してもらえた?
その帰り道、妙子は佐山の待ち伏せ襲撃をくらい、命を落とす。
さらに、佐山は次のターゲットを、野咲に定めた。
妙子の、いさぎよさがグッド。
相場の本性
野咲は妹の入院する病院へ、お見舞いに行く。そこで相場と出くわす。
「―野咲が病院にいるって聞いてさ。会いたくて来ちまったよ。」
「野咲…心配するな。妹がいなくなっても俺がいる。俺がいるじゃないか!」
と、看護師が走って、こちらに来る。
野咲のおじいちゃんが何者かに殴られて、救急車で運ばれてきたという。外に出る相場。
おじいちゃんが乗った担架に走り寄り、声をかける野咲。そして、相場の言葉を思い出す。
「―野咲が病院にいるって聞いてさ。」
相場を追いかける野咲。外の林の中で彼を見つける。
彼の手には、人を殴ってできた傷が無数にあった。
DV野郎じゃねーか!
写っていたのは燃える家族
おじいちゃんに、学校を卒業したら野咲と同居がしたい、と願い出たら拒否されたので暴行したという。
それを聞き、彼を強く拒絶する野咲。
すると、木の陰から佐山が姿を現してくる。そして野咲の腹を包丁で突き刺した。
それを見た相場は怒り狂い、佐山をフルボッコにする。
と、カバンから写真が落ちてきた。それを拾う野咲。
写真に写っていたのは実家が放火され、炎の中でもがき、苦しんでいる父親と妹の姿だった。
先輩、まずいですよ。
最後の復讐
なにか言い訳をする相場。
絶叫をあげた野咲は、お構いなしに詰め寄り、包丁を振り下ろす。
相場は佐山を盾にしてそれを防ぐと、今度は野咲をフルボッコにする。
野咲は地面をはいずりながら移動していく。
雪が次第に強くなる。
あたりにはいっぱいのミスミソウが、顔を出していた。
こいつ、いつもフルボッコしてんな。
映画化(グロ多め)
今作は2018年に実写映画化。ちなR-15指定。
監督・内藤瑛亮さん(先生を流産させる会、ライチ☆光クラブetc)。
主演・山田杏奈さん(ゴールデンカムイ、新米姉妹のふたりごはんetc)が務めています。
レビューでは、
- 原作の再現度が高い
- 死に方がグロい
- 雪と血しぶきのコントラストが印象的
という声が多く、原作のグロシーンもがっつり再現している模様。
また妙子が生存するなど、原作とは所々で違っているようです。
感想:ミスミソウみたいなヒロイン
相場いわく、「はにかみや」だという野咲。
彼女が、自分の心情を口にするということは、ほとんどない。いじめっ子たちに復讐するときでも、無言で襲ってくる。
印象的だったのは、妹のお見舞いで病院に行ったとき。妹の人工呼吸器?が緊急アラームを鳴らし、おじいちゃんが救急車で運ばれてくるという状況のなか。
野咲は家族に寄り添うよりも、相場を追いかけて真相の究明(と復讐)することを優先。
すべてを終えた後、亡くなった家族を思って号泣する当たり、本当は家族思いなのでしょう。
冬を耐えて、春になると花を咲かせるという、ミスミソウ。
それに照らせば、冬(復讐)をおえて、ようやく本心がおもてに出てきたというところでしょうか。
むなしさの残るお話でした。
まとめ:いじめと復讐がテーマの傑作マンガ
以上、押切蓮介先生のミスミソウでした。
とある美少女が田舎の学校に転校してくる。が、いじめのターゲットに。
ヒロインは耐え忍ぶも、実家が放火され、家族が犠牲になってしまう。
その後、放火犯がいじめっ子たちだと判明すると、ヒロインの復讐が始まる。
「ミスミソウ」とはいったもので、ヒロインの本心が全然おもてに出てこない。けれども、あきらかに復讐の鬼になっているわけで。
押切先生らしい、人の心の闇が、どす黒く描かれた作品だと思います。
押切先生のかげろうの日々も、いじめと復讐がテーマの短編だよ。
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