【成層圏気流】のあらすじと兵器紹介:松本零士の戦争まんが

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人間ドラマ

 みなさんは心の中の悪魔がそそのかしてきたとき、どう対処しますか?

 松本零士先生の成層圏気流では第二次世界大戦(ww2)末期のドイツ人パイロットと、原子物理学者の親子が名誉を、あるいは生命をかけて悪魔に対抗します。

 なかなかマネすることはできませんが、読むと勇気が湧いてくる作品になっています。

面白かったところ
  • ラインダースが、後ろ向きな性格なのにカッコいい
  • WW2末期なので、ジェットにロケットにと、新兵器が登場する(メインではないけど)
イマイチだったところ
  • 学者親子が無理難題をラインダースに押し付けてくるのがアレ

悪魔って何のこと?

大量破壊兵器の使用で得られるもののことだよ。

大尉の場合は、名誉と汚名返上だね。

概要

あらすじ

 夜のドイツ・上空9000m

 ラインダース大尉は、愛機・フォッケウルフ190とともに、夜間哨戒を行っていた

 と、僚機が突如、爆発。敵機の奇襲攻撃を受ける。

 敵は高高度に強いスピットファイア。勝ち目がないと判断したラインダースは自機から脱出。危機を逃れる。

 しかし、あとになって自機が無傷の状態で発見される。

 ラインダースには、これが愛機による抗議に思えた。一度も打ち合うことなく、上空9000mで自分を見捨てた、無言の抗議。

 ラインダースはこの日から、戦わずして逃げた卑怯者のレッテルを押される

 だが、まもなく、汚名返上の重要任務が舞い込んできた

登場人物

ラインダース
 ドイツ空軍所属の軍人。名誉と友情を天秤にかけて、友情を選ぶカッコいいやつ。

上司
 ラインダースの上司。四角い眼鏡がトレードマーク。核爆弾に“新しい時代が来る”とウッキウキのご様子。しかし、撃ち落される。

メルヘンナー
 原子物理学者の娘で助手。ラインダースと仲が良く、積み荷の正体をこっそりと教えてくれる。”メンヘラ―”ではない。

物語の内容

核爆弾の護衛任務

 ドイツ空軍基地

 ラインダースは先の空戦についての報告を行う

 と、飛行場に連合国の爆撃機・B-17が駐機していることに気づく。その横には、かつての恩師である原子物理学の教授と、その娘・メルヘンナーがいた。

 次の任務は彼らと、ある積み荷を乗せたB-17の護衛だという。

 メルヘンナーが積み荷について、こっそりと教えてくれる。

 核爆弾

 これをV2ロケットに乗せ、ロンドンかモスクワに核攻撃を行うという。汚名返上にはもってこいの重要任務。

 しかし、メルヘンナーは自分たちが作った核兵器を使用することに反対だという。これを使用したものは悪魔に魂を売った鬼として永久に名を残すことになる。

 逡巡するラインダース

 「この中に悪魔がいるとしたら…。俺たちのことをなんていうだろうか。」

大量破壊兵器を投入するっていうのは重い決断だよ。

名誉と友情の天秤

 任務当日

 「ドイツの運命がこれにかかっている。」と送り出されるラインダース。

 続けて核を乗せたB-17も離陸。高度1万mに到達。

 最新鋭機・Ta152に搭乗したラインダースは、さらに上空の位置から周囲に目を光らせる。

 と、敵機・スピットファイア小隊が姿を現す。

 先頭機がB-17に機銃掃射を加える。二番機がさらに掃射。

 B-17に乗っている上司が、あわてて無線機を取る。

 「ラインダース!!」

 「ラインダースどこにいる!!」

 攻撃を受けているB-17を、額から汗を垂らしつつ、ただひたすらに見つめるラインダース。

 涙を流すメルヘンナー。

 「ありがとうラインダース。」

 B-17は、ついに大きな炎を上げる。そして、三番機が最後の機銃掃射を加えた

いろいろな兵器が登場

フォッケウルフ190

 ラインダースの愛機で、WW2期のドイツを支えた傑作戦闘機。特に低高度での性能が高く、対空・対地と様々な任務で活躍する。

 しかし、大戦後期になると連合国側が、高高度爆撃を本格化。

 高度6000m以上では、ウンコ化してしまうフォッケウルフ190は、高高度性能を高める必要に迫られる。

Ta152

 高高度性能を高めたフォッケウルフ190。”Ta”は設計者、クルト・タンクの頭文字。

 エンジンや主翼を高高度仕様に改め、高度1万mでも時速750km超をたたき出すなどパワーアップ。

 したのだが、高高度での信頼性がイマイチで、結局は低高度で運用される。

 短い運用期間ながらも、エースパイロットを輩出したりと性能は悪くなかった。

スピットファイア

 イギリスが生んだ名作戦闘機。特徴的な楕円翼を持ち、大量の派生型がある

 作中では”新型エンジンを積んだ、翼端を切ったやつ”とされ、明言はされていないがMk.XIIが該当する。

 しかし、これは低高度仕様の機体なので、結局はよくわからない。

 ちなみに、スピットファイアの語源は”かんしゃく持ちの女性”という、なかなかひどいものだったりする。 

この時代にロケットがあったんだ。

労働現場では約一万人が過労死しているよ。

ブラック過ぎる…

アニメ化(ザコクピット)

 1993年に「ザコクピット」のタイトルでアニメ化されました。音速雷撃隊と、鉄の竜騎兵の三本立てOVA。

 製作はマッドハウス、ジャコム、ビジュアル80。

 声優には、ランダース役を、ブラッド・ピットでおなじみの堀内賢雄さんが担当。

 メルヘンナー役は、セーラージュピターを演じた、篠原恵美さんが担当しています。

感想:「私は後悔はしていない」

 ラインダースはアフリカ戦線から、第一線で戦い続けたベテランパイロット。空戦で負けたのは冒頭の一戦のみ。

 しかし、その敗戦が彼の運命を急転直下させる。本人いわく”地獄で戦う羽目になった”。

  • 卑怯者のレッテルを張られたうえに、恩師と友人を見殺しにする
  • 汚名返上の機会が訪れるものの失敗
  • むしろ汚名挽回してしまった彼は、永久に卑怯者のレッテルを張られる

 だが、最後のモノローグがカッコいい。

 「私は後悔はしていない。」

 名誉も友人も失ったけれど、本当に守りたいものは守れた。

 いやぁ、カッコいいです。

まとめ:ラインダースがカッコいい

 以上、松本零士先生の成層圏気流(ザ・コクピットシリーズ)でした

 自身の高い判断力が原因で、計らずも卑怯者のレッテルを張られてしまったラインダース大尉。

 汚名返上の機会として与えられた任務は、核爆弾&原子物理学者をロケット発射基地まで護衛するというもの。

 悪魔に魂を売って名誉を手に入れるのか?

 悪魔に魂を売らない代わりに、永久に卑怯者と呼ばれつづけるのか?

 終盤の大尉は迷いに迷いまくっています。そのあたりに大尉の人間臭さとカッコよさが感じられましたね。

ザ・コクピットシリーズはドイツ絡みが多いね。



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