戦争のさなかにあっても、自分たちの夢をあきらめない男二人の物語。
興味はありませんか?
松本零士先生の衝撃降下90度(戦場まんがシリーズ)がおすすめです。
世界大戦末期、日本はアメリカの高速戦闘機に頭を悩ませていた。
航空機技師・山越は、アメリカに対抗するには音速を超えるような戦闘機が必要だと説く。パイロット・台場も、それに同調。
二人は自分たちで作った飛行機で音速を超えるという、夢を追いかけていく。
- 絶対に音速を超えてやるんだという、パイロットの意地
- 架空の戦闘機・キ99のデザインが、かっこいい
- 途中、パートナー技師がへたっちゃう
- アメリカ軍の存在が空気

松本作品の台場率って高くね?
概要
あらすじ
八丈島上空・高度一万一千二百。
戦闘機・キ99は、急降下試験を開始した。
降下角六十度…速度七百!
降下角八十速度七百八十!
降下角九十速度八百…!スロットル全開!
速度が上がるごとに機体の振動が激しくなり、操縦桿(そうじゅうかん)が重くなっていく。
速度一千キロ
ついに、操縦不能におちいり、機首から潤滑油が噴出。
機体は空中分解してしまった。

高度一万メートルからの急降下って、やべぇな。
登場人物
台場
キ99のパイロット。山越とともに、音速越えを夢見て今日も空を飛ぶ。が、試験のたびに航空機が爆発。片手片足を失ってしまう。それでも義手義足を取り付け、夢をあきらめない。
山越
航空機の技術者で台場の友人。自身が設計した飛行機での音速越えを夢見る。が、失敗を繰り返してしまい、自信を失っていく。手足を失ってもあきらめない台場に、やや引き気味。
物語の内容

音速越えは二人の夢
キ99のパイロット・台場は一命をとりとめるも、右足切断の大けがを負ってしまう。
そこへ、技師&友人の山越が見舞いにやって来る。
山越はアメリカの高速戦闘機に勝つには音速を超えるような機体が必要だと熱く語る。台場もそれに同調。
「自分で作った飛行機で、音速(1224キロ)を超えるのがおれたちの夢だったものな。」
「心配するな…、おれが必ず音速を超えてやる。」
二回目の急降下試験。
前回同様、八丈島上空一万一千五百から急降下を開始する。
降下角四十五度 速度…七百!
七十度… 九百…
九十度 九百二十…
「振動激しい…翼端(よくたん)がねじれる…フラッターだ。」
羽根にミシミシ音が鳴るや、機体は爆散した。

P51マスタングは時速700km超だよ。

ゼロ戦が時速500km台半ばだから、きついね。
ラストチャンス
台場は生還するも、今度は左手と右目を失ってしまう。
そこへ浮かない顔をした山越が見舞いに来る。
「もうよそう。この実験は無理だ。音速は越せないよ。」
それを聞いてブチギレる台場。
「はじめた以上、途中で逃げるな、弱音をはくな!!」
「もう手遅れだ。」
そして三回目の急降下試験。
もう燃料がなく、ラストチャンスになるという。
「今日は必ず音速を超えてみせる。」
「戦争も勝敗も、もうおれには関係ねぇ。」
そう言い残して台場はキ99を離陸させた。
そして高度一万二千。最後の急降下試験を開始。
降下角度四十五度 速度…七百…
降下角九十 速度…九百八十!
「振動激し…」
速度…一千…百
速度…一千百五十!
速度一千二百二十五キロ!!
「音速を超えた!!超えたぞ!!」
そのとき、キ99の前に白色の壁が現れ、大空に爆音をとどろかせた。

これでよかったのか…?
キ99とは?
作中に登場する試製高高度戦闘機・キ99。
実はこれ、架空の戦闘機です。
松本先生が子どもの頃からイメージしていた夢の航空機。
機種に付けられた二重反転プロペラや、胴体下に並べられた排気管など、中二心くすぐられるデザインになっています。
食玩プラモデルも発売されていましたが、すでに販売終了。なにやらいいお値段に…。
ラジオドラマにもなった
今作はラジオドラマになっています。
演じるのは台場が大ベテラン・神谷明さん。山越を富山敬さんが担当しています。
放送されたのが1970年代と非常に古く、商品化されてはいるものの、なんとレコード(LP盤)。
時代の流れを感じます。

富山さんは、古代進(宇宙戦艦ヤマトの主人公)も演じているよ。
感想:音速を超えた代償
世界大戦の真っただ中に”戦争なんて関係ねぇ!”と、公言してまで夢を追いかけた男二人。
しかし、途中から二人の夢追いの熱中具合に差が出てきます。
台場は最初から最後までイケイケゴーゴー。一方の山越は、はじめは台場以上に情熱的だったのが、中盤からうしろ向きになる。
きっかけは、二回目の試験で台場が大ケガ(二回目)をしたこと。一回目で片足を、二回目で片手と片目を失う。それじゃあ、三回目は…?
そして予想の通り三回目の試験で、音速を破ることに成功するも、台場は木っ端みじんになって帰らぬ人に。
気になったのは、序盤と中盤では感情的だった山越が、やけに落ち着き払っていたこと。あるいは、台場を三回目の試験に送り出した時点で、腹をくくっていたのかもしれません。
夢をかなえる代償を承知しつつも、なお夢を追いかけた、あつぅい男二人でした。

音の壁って、そんなに危ないの?

初めて壁を破ったチャック・イェーガーは、何事もなく帰還できたよ。
まとめ:夢に挑戦しつづけた二人
以上、松本零士先生の衝撃降下90度(戦場まんがシリーズ)でした。
世界大戦末期、アメリカ軍の高速戦闘機に対抗するには、音速を超えた航空機を作るしかない。台場と山越は二人の夢をかなえるために、一致協力して音速越えに立ち向かう。
しかし、試験に失敗するたびに台場は大けがを負って帰ってくる。心が折れかける山越を、台場は叱咤激励する。
そして三回目の試験で、ついに音速越えを成功させるが、台場は音速の壁にぶち当たり…。
松本先生らしい、漢(おとこ)二人の物語でした。
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