うしろの百太郎(著つのだじろう)の、怖い短編・人食い沼の恐怖をご紹介。
クラスメートの知人が、とある沼でおぼれて行方不明になってしまう。
その沼は昔の刑場で、大勢の人が処刑されたといういわくつき。毎年、行方不明者を出していることから、人食い沼と呼ばれている。
主人公・一太郎は、クラスメートとともに人食い沼へ行き、恐ろしい事件に巻き込まれてしまう。
本作は七つある短編の中でも、怖いと胸張ってオススメできる作品です。
うしろの百太郎の短編は、どれも秀逸な話だよ。
概要
あらすじ
一太郎は、クラスメートの女子から相談を受ける。
なんでも姉の友人が人食い沼でおぼれ、そのまま行方不明になってしまったという。
それ以来、姉は自分も沼へ行くと言ってきかず、今度の休みに姉と自分とで出かけることになった。なので、その小旅行に一太郎も一緒に来てほしいのだという。
一太郎はそのことを父親に相談する。すると、信州の慟哭寺沼(どうこくじぬま)のことではないかとのこと。
昔の刑場で、界隈では有名らしい。大勢の人が処刑され、流れ出た血が溜まってできたのが慟哭寺沼だという。
と、いうことで一太郎父子とクラスメート姉妹の四人で、現地へ向かうことになった。
登場人物
一太郎
主人公。霊能力はあるものの、除霊能力はからっきし。今日も元気に死にかける。
父親
一太郎の父親。霊能力はないが、知識欲は旺盛。今回も一太郎についていき、元気に死にかける。
百太郎
一太郎の守護霊。強力な力を持っているが、一太郎が死にかけないと姿を現さない。今回も沼に引きずり込まれ、溺死寸前になってから姿を現す。
礼子
一太郎のクラスメート。彼を事件に巻き込んだ張本人。一人称は“礼子”。ちょっとかわいい。
弘子
礼子の姉。彼女の友人が、人食い沼で行方不明になったのが、今話のきっかけ。この姉妹はデザインが、つのだ先生っぽくない。とてもかわいい。
物語の概要
引きずり込まれる二人
一行は信州・慟哭寺沼に到着。
現地では行方不明者の捜索が行われていた。姉も友人の名前を呼びながら周囲を回るも見つからず。
父親の説明では、沼でおぼれた場合、沼底の藻に絡(から)まって浮いてこないことがあるらしい。
そして、この日の捜索は終了。一行は近くの宿で宿泊する。
が、深夜になって姉が姿をくらましてしまう。
一太郎父子は慟哭寺沼へ直行。二手に分かれて捜索を開始。姉の名前を呼びながら沼に近づく一太郎。と、水面から腕が出てきて一太郎の足をつかんだ。
腕の主は姉。
「たす…けて!」
そう言ってしがみついてくるのだが、草食系男子はそのまま沼へドボン。
共倒れするかに思われたが、音を聞きつけた父親が駆けつけて間一髪。
二人は救助される。
人食い沼に無数の生首
一度、宿へ戻る一行。
姉の話では、何かに誘われ、気が付いたら沼の中でもがいていた。
そしてその時、誰かが自分の足と掴み、ぐいぐいと沼の底へ引っ張ってきたという。
クラスメートは、一太郎に来てもらってよかった、と言って喜んでいる。
しかし、誰が姉の足をつかみ、沼底へ引きずり込もうとしたのか?
一太郎父子は、このままでは犠牲者が増えてしまうと考え、慟哭寺沼へ向かう。
あたりに人影はなく、沼が月明かりに照らされているのみ。
突如、水面が泡立ち始めた。
その中から現れたのは、人の生首。
無数の生首だった。
感想:完成度高めの怖い話
主人公が、元処刑場の底なし沼で大変な目に遭うという王道的ストーリー。
完成度が高く、身近な人が巻き込まれる怖さ。さらには自分も水中に引きずり込まれる怖さ。
この辺りは磯幽霊怪異変と共通するものがあります。この話も怖い!
個人的には、うしろの百太郎は一話80P前後の本編よりも、一話30Pくらいでサクサク進む短編の方が好き。
亡霊学級もだけど王道的で完成度が高い、そしてテンポが良い。
つのだ先生の真骨頂なのだと思います。
まとめ:秀逸なホラー短編
以上、つのだじろう先生のうしろの百太郎から、人食い沼の恐怖をご紹介しました。
人が次々と行方不明になるうえ、遺体も見つからないという呪いの沼。
クラスメートの知人が沼で行方不明になったことがきっかけで、一太郎たちは巻き込まれることに…。
一度は危機から逃れるものの、これ以上の被害者を出すべきではないと再び現場に行く。その正義感が仇(あだ)となり、二度目の危機に瀕してしまう…。
短編なので少し短いストーリーですが、しっかりと要所を押さえた、怖さ抜群のお話です。
人食い沼の恐怖は、今のところ電子書籍化されてないみたいだ…。
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