母娘愛。清く美しい、無条件の愛情…。
なんてものを想像しがちですが、楳図かずお先生の母娘愛は違います。
母親は娘を、愛してはいますが、恐ろしく見返りを求めています。
娘も母親を、愛してはいますが、スゲェ歪んだ見方をしています。
母娘愛への洞察やべぇって感じの作品です。
おすすめ度 | |
母娘の狂気 | |
サスペンス | |
ミステリー |
わたし、最近お母さんに似てきたかも。
そろそろか…(ガタッ)。
概要
あらすじ
町はずれに二人の母娘が暮らしていた。
母親は娘・さくらを異常なレベルで溺愛。さくらは、そんな母親に違和感を抱いていた。
ある夜、さくらは母親が野良犬を、二階の部屋に連れて行くのを目撃する。
疑問に思ったさくらは、後日、その部屋を調べてみる。と、そこには、頭部に穴のあいた犬の死体があった。
そのとき、電話が鳴る。それを取るさくら。受話器から母親の声が聞こえてくる。
「さくらは十分大きくなりました。さくらの頭の中へわたしの脳を移しかえてもだいじょうぶです!!」
「そのためにさくらを産んだのよ!!」
登場人物
さくら
美しい容姿をした少女。自分を溺愛する母親に対して、いろいろと思うところがある。特技は顔芸。「ギャーッ!!」
いずみ
さくらの母親。かつては美人女優として名をはせたが、今は見る影もない。外見は醜(みにく)いが、中身はもっと醜い。
感想・レビュー
母親の「美」に対する執着心と娘への押し付け
母親は美しさに定評のある女優さん。
子役時代から自身の美しさに強くこだわり、軽くこじらせています。
年齢を重ね、日に日に美しさを失っていくことに強迫観念を抱き、ある日に娘とともに失踪。
「いつまでも美しくありたい」という夢・希望・願い、すべてを娘に託します。
重い、重いよお母さん・・・
娘が抱いた母親への愛情と憎悪
娘・さくらは母親からの愛情と希望を一身に受けて育ちます。「少し過保護かな」くらいに思いつつも、お母さん大好きないい子になります。
はた目には仲の良い母娘ですが、さくらの心の奥底では母親への愛情とともに深い憎悪をもはぐくんでいました。
「お母さんは本当はやばいやつ」という認識が中盤以降に大爆発し、さくらのイメージがガラリと変わってしまいます。
さくらも普段はお母さん大好きっ娘で、憎悪なんておくびにも出していないよ。
それがとあるきっかけで前面に出て、暴走状態になっちゃうんだね。
母娘愛がテーマ・・・かな?
「母娘愛がテーマ」と聞くと母親と娘が力を合わせて困難に立ち向かう、なんてイメージしそうですが洗礼は違います。
母親は娘に深い愛情とともに重すぎる希望も与えました。
それらを受け取った娘は母親への愛情とともに、「アイロンを振り回すくらいにはやばいやつ」という認識もはぐくんでいき、それが次第に憎悪へと変化していきます。
実際には振り回していないんだけどね。
さくらの中では「アイロン振り回すのもやりかねない」って認識だったんだね。
まとめ
以上、楳図かずお先生の洗礼の感想・レビューを取り上げました。
典型的なホラーマンガというよりは、人物の内面にスポットを当てたミステリーやサスペンスの要素が強い印象です。
母娘の愛憎劇?がテーマの良作です。
娘への押し付けに、母親への憎悪かぁ。
それらもひっくるめて「愛」なんだよ。
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