夢か現(うつつ)か…。霧の中で幻の戦車と出会うお話。興味はありませんか?
松本零士先生の鉄の墓標は、実戦投入されることのなかった戦車・四式中戦車を描いた物語です。
WW2。日本の97式中戦車は、防御力の低さから”鉄の棺桶”と揶揄されていました。
歩兵・足立は実用試験中の四式中戦車に乗り込み、宿敵・M4中戦車を圧倒していく。
そして足立が降車すると、四式は砲火の飛び交う霧の中に消えていった…。
戦車を主役にした、ロマンとむなしさを描いた作品になっています。
- 四式中戦車・無双のカタルシス
- 幻戦車のロマン
- “最後はみんな死ぬ”を地でいっちゃう
概要
あらすじ
WW2の東南アジア。
日本軍の97式は防御力の弱さから、”鉄の棺桶”とか”ブリキの戦車”と呼ばれていた。
このときも、連合軍のM4と対峙して瞬殺。97式は爆発・炎上してしまう。
その横には歩兵が一人、倒れこんでいた。

鉄の棺桶って…。
登場人物
足立
日本軍所属の兵士。あるものの捜索中に97式の爆発に巻き込まれてしまう。四式中戦車では、即席の砲手を務める。
土方
日本軍所属の将校。四式の実用試験を行うも、戦車兵がコレラにかかってしまい、身動きが取れなかった。四式では車長を務める。
物語の内容

四式中戦車、登場
歩兵・足立は意識を取り戻すと、自動小銃を装備した将校・土方と出会う。
そのまま土方に連れられて行くと、そこにあったのは巨大な四式中戦車。主砲も97式とは、あきらかに違う。
人手不足で動かせなかったが、足立が来たことで、動かせるという。
「M4をふみつぶす。」

史実よりも大きい90mm砲を搭載しているんだね。

これで勝てる!
霧に消える戦車たち
四式発進!
と、さっそくM4三台に遭遇する。
M4が先制攻撃を仕掛けてくるも、四式の厚い装甲はビクともしない。そして四式の放った砲弾は、M4の装甲を貫き、大爆発を起こさせる。
「今度は、敵が鉄の棺桶になったか…」次いで二台目も撃破。
しかし、残る一台を取り逃がしてしまう。
「一台とり逃がしたのはまずい…」
土方は四式から降りて車体と、破壊したM4をチェック。そしてメモ帳に主砲の威力や、装甲の防御力について書き込むと、それを足立に預けた。
「川べりにいる戦車将校にその手帳をわたしてくれ。」
そう言って送り出すと、土方は四式を再始動。向こうの平原から押し寄せてくるM4の大群に向かっていく。
霧が立ち込めるなか、双方の打ち合いが開始。
霧はいよいよ濃くなっていく。
ついには、もやのなか、轟音と閃光がぼんやりと確認できるだけになっていった…。

あれは…幻?

かもしれないね。
登場する戦車

四式中戦車(チト)
日本軍が開発していた中型戦車。
97式ではM4に対抗できないということで、攻撃力・防御力ともにパワーアップ。スペック上はM4と同レベルにまで引き上げられた。
が、開発が遅れに遅れてしまい、量産が開始されるや終戦を迎えてしまう。

四式、おまえと戦いたかったよ。
97式中戦車(チハ)
日本軍の主力戦車。
初実戦のノモンハン事件を皮切りに、日中戦争でも活躍。太平洋戦争でもすばらしい働きを見せてくれる。
が、連合軍が新型のM4を投入してくると一変。鉄の棺桶と化してしまう。
それでも主砲を改良するなどして、終戦まで主力機として頑張った。
M4中戦車
連合軍の主力戦車。
設計時点で戦車同士の戦いを想定、優秀な攻撃力と防御力をあわせ持つ。
が、装甲を破られると、やたらと火災が発生。
その火のつきやすさから、連合国からは”ジッポー”呼ばわりされ、ドイツからは”イギリス製調理器具”とあだ名された。
感想:鉄の墓標の意味
タイトルの”鉄の墓標”は、97式を指しているかと思ったが、どうも違うらしい。物語冒頭で、
「この世に、無敵の戦車などありはしない…あるのは、ただ鉄の棺桶だけだ!!」というモノローグ。
序盤は97式がボコられるものの、中盤ではM4がボコられ、終盤では四式とM4双方がボッコボコに。
鉄の墓標というのは、戦争に参加する戦車そのものを指しているらしい。
四式は、史実では実戦投入されなかった幻の戦車。
霧にまみれて姿を消していく最後が印象的でした。

いいタイトルだ…。
まとめ:無敵の戦車は存在しない
以上、松本零士先生の鉄の墓標でした。
日本軍の主力戦車が一方的にボコられる。
そんな中、ある歩兵がこれまで見たことのない巨大な戦車に乗り込み、連合国の主力戦車をボコる。
歩兵が巨大な戦車から降車すると、今度は双方のボコりあいが始まって…。
無敵の戦車など存在しない。鉄の墓標とはよく言ったものです。
四式が強すぎることも含め、ロマンとむなしさを感じさせる作品でした。

実際の四式はM4と同スペックだから、無双は難しいみたい。

そこはロマンよ!
コメント