ある日、目が覚めたら巨大な虫になっていた。そんな理不尽な話があるでしょうか?
あるんです。
日野日出志先生の毒虫小僧は、実家にも学校にも居場所のない少年に降りかかった、理不尽や不条理がテーマのお話。
本作を読めば、”自分は毒虫小僧よりましだな”と思える、強メンタルを手に入れられるでしょう。
タブンネ。
毒虫小僧は、カフカの変身がモデルになっているよ。
おすすめ度 | |
不条理 | |
かわいそう | |
きもかわいい |
概要
あらすじ
三平少年は成績オール1の落ちこぼれ。家族からは叱責と体罰を受け、学校ではいじめと体罰を受けている。
そんな彼の幸せは大好きな虫や動物たちと触れ合うことだった。
しかし、ある日、真っ赤な色をした毒虫に指先を刺されてしまう。
翌日、手の指が腐って落ちたのを皮切りに、両手両足がもげ、全身がドロドロに溶ける。両親は
「どうせもう長くはもたないだろうしなぁ…」
と言って、介護拒否。三平を部屋に放置する。
しばらくたち、家族が三平の部屋を覗くと、そこには巨大な毒虫が鎮座していた。
登場人物
三平
小学五年生の少年。成績がオール1という、のび太のような人物。しかし、彼には親友もいなけりゃ、猫型ロボットもいなかった。
父親
三平の父親。昭和のパワハラ親父を、地で行くような人物。息子の命よりも、出世が大事。
その他家族
三平の同居家族。母親・兄・妹のメンツ。父親に同調し、三平の排除を粛々と進めていく。三平いわく、昔は優しかった。
物語の内容
弱者から強者に変身
毒虫の正体が、三平だと判明する。
しかし、扱いに困った家族は毒エサでもって三平を殺害。庭に埋めてしまう。
土中で息を吹き返した三平は、そのまま家出。自由の身になる。
ある日、彼は人間たちに襲われてしまう。自己防衛のために反撃をする三平。
と、圧勝。ここにきて、自分の力の強さを自覚する。
そして人間時代に自分をいじめていた連中への復讐を開始。次々といじめっ子たちを殺害していく。
しまいには快楽殺人に目覚めてしまい、手当たり次第に人間を襲うようになる。
このころから、三平の記憶は薄れ、自分が人間であったことも忘れてしまった。
失ったものの大切さ
下水道で過ごすようになった毒虫小僧。
ふと、なつかしい匂いが鼻をかすめる。
匂いを追っていくと、ある一軒家に到着。毒虫小僧は窓から家の中をのぞく。そこでは三平の家族が食卓を囲んでいた。
それを見た毒虫小僧の目から涙があふれ出る。なつかしさと悲しさで胸が張りさけそうになった。
次の瞬間、窓が開き、父親が猟銃を構えた。
「来たな怪物め!!死ねぇ~っ!!」
カフカの「変身」との共通点
主人公にとっては不条理で悲劇的な話だよね。
変身は作者であるカフカの
仕事関係や家族関係を寓話風に書き上げた作品だといわれているよ。
感想:強者だから幸せ、とは限らないよね
序盤の三平は間違いなく弱者でした。実家でも学校でも、小バカにされて居場所のない状態。
しかし、虫や動物たちとは積極交流。秘密基地的な場所を作って、割と幸せそうに過ごしています。
ところが、自分の力の強さを自覚すると強者に変身。彼の豹変っぷりには、ショックを受けます。
大好きだった動物たちとの交流も断絶。
終盤、失ったものの大切さを理解した彼には、目頭が熱くなりました。
まとめ
以上、日野日出志先生の毒虫小僧を紹介しました。
変身をモデルにしたといわれている通り、二作とも不条理をテーマにした作品になっています。
主人公二人はどうしようもなく理不尽で悲劇的な目にあいますが、それへの立ち向かい方が違っています。二作を読み比べてみるのも面白いと思います。
変身って単行本がたくさん出てるね。
著作権が切れているから翻訳本が多く出ているんだ。
定番は新潮文庫の高橋義孝さんの翻訳だけど、いろいろと試し読みするのも良いね。
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