人間誰しもいつかは寿命を迎えますが、死に至るまでの心の変遷に興味はありませんか?
日野日出志先生の怪奇!死人少女では「確実に死ぬ」と診断を受けた主人公の心と、彼女の看病を続ける家族のそれを知ることができます。
おすすめ度 | |
家族愛 | |
死の受容 | |
グロさ |
生きながらに腐っていく…、前にも聞いたような?
「腐乱少女」や「死肉の男」だね。
日野日出志先生がしばしば使う題材だよ。
概要
あらすじ
ある春の朝。
百合は体調不良を感じるも登校する。そして健康診断で心臓が動いていないことが発覚。
病院の検査では、肉体的にはすでに死んでいる状態だという。
治療の余地はない。防腐剤を注射し、進行を遅らせるのが精一杯という状況。
夏ごろ。
体からウジ虫がわき始め、腐臭がただよう。
一家は住宅街での生活は難しいと考え、山奥の一軒家に引っ越すことにした。
登場人物
百合
主人公の中学生。生きながらに腐るという、とんでもない目にあう。
大原一家
百合の家族。父・母・妹の構成。百合のために最善を尽くす。
身体に防腐剤を打つ!
主人公は医師から「心臓が停止していて肉体的には死んでいる」という診断を受けて以来、体が腐らないように家族が処置を行っています。それは防腐剤を注射するというもの。昆虫標本に使うアレですね。
これは「絶対に助からない」という死の宣告のようなもの。この処置を聞いたとき死の淵に立たされたような、強いショックを受けます。
防腐剤を体に打つって、絶対に死ぬじゃん!
そう、絶対に死ぬっていうか死んでる?
本人と家族が死を受け入れる入口に立った瞬間だよ。
最期まで看病を続ける家族
家族による看病生活は自宅から始まります。
しかし病状の進行による腐臭や、「お前のねーちゃんゾンビー!」といじめを受ける妹のこともあり田舎へ移住。季節の変化とともに主人公の腐りも進んでいきます。
はじめは「いつか治る」と言っていた家族も、次第に「治る」とは言わなくなり少しずつ彼女の死を受け入れていくようになります。
「お前のねーちゃんゾンビー!」はひどいセリフだよ。
火の玉ストレートだね。
死の受容と感謝の言葉
死の宣告をうけた主人公は驚き絶望しますが、体が腐り激痛が襲いだすとそれどころではなくなります。
次第に痛みが収まりだすと「穏やかな気持ち」になっていきます。さらに腐食が進んで身動きすらできなくなると、たどたどしい言葉で家族に感謝の言葉を述べます。
「ありがとう」
涙がで、出ますよ。
出しちゃっていいっすか?
まとめ
以上、日野日出志先生の怪奇!死人少女でした。
それなりのグロさはありますが、ストーリーのメインは家族愛と死の受容です。
子供(あるいは姉)がどうなろうと絶対に見守り続ける家族(蔵六は見捨てられた)。その家族への圧倒的感謝。そして最期の時を迎え…。
日野先生の腐っていくシリーズで一番の良作です。
腐り描写はやや控えめかな。
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