犬や猫にも「こわい」という感情はあるのでしょうか?
そしてそれは、人間の「こわい」と同じものでしょうか?
楳図かずお先生のばけものはそれらをテーマにした作品になっています。
動物実験を行っていた医大実験所に、突如ばけものが出現。研究者たちを次々と喰っていきます。そして生き残った者たちは口にします。
「人間には想像もつかないようなばけものだった。」
ばけもの登場
某医科大学では動物を使った生物実験が行われていた。それは犬の背中に電極を刺し、電流を流すというもの。実験に耐えられずに死んでしまった犬は、そのままゴミ箱へ投げ捨てられる。
その日も実験中に犬が死亡。主人公・助手は、上司の指示を受けて、外の小屋から次の犬を取りに行く。
そして外へ続くドアを開けた時、そこにいたのはばけもの。大きな口と毛むくじゃらの巨体を持った、人間の想像を超えたばけものがそこにいた。
助手は近くにあった鉢植えを投げつけ、そのスキに研究室へダッシュ!
「ばけもの!!」
助手が叫びながら入室すると、上司や同僚が確かめに廊下へ出る。が、そこには何もいない。あなたつかれてるのよ状態の助手は、首を傾(かしげ)げつつも、同僚と一緒にもう一度犬を取りに外へ出る。
脈絡(みゃくらく)もなく、ばけものがでたね。
昔のホラー映画のような安心感。
実験体のわんこたち
助手と同僚は小屋の前に到着。何も知らない犬たちはシッポを振りながら、わんわんお、とお出迎え。
さすがの二人も、なんとなくやりにくい、とグチりつつ良さげな犬を物色。その間も二人にシッポを振ったり、お手をしているわんこたち。
が、一匹だけは違った。そいつは小屋の隅で二人をにらみつけ、牙をむき出しにして吠え続けていた。
そして小屋からの帰り道。二人はその犬について話をした。
「あれは憎しみと恐れの目だ…。あいつだけは感づいている。」
同僚に抱かれた犬は、自分が実験台にされるとも知らずに、ペロペロと顔を舐めている。
実験室に到着。棚には薬品や、ホルマリン漬けの臓器が並べられている。お気楽なわんこも察してキャンキャン吠え始めるのだが、研究者たちはお構いなしに拘束を開始。
「ばかめ!!今頃気がついてもおそいわ。」
犬の拘束が完了した、その時。
研究所の隅に、例のばけものが姿を現した…。
実験で死なすために育てられてきたとか…。
わんわんお…。
人の想像を超えた何か≒ばけもの
研究室はパニックに陥(おちい)る。
ばけものは、先ず手前にいた同僚の頭をわしづかみにしてガブリ。棒を持った研究者が殴りつけるも返り討ちに。
仲間たちの悲鳴を背に、助手は上司とともに研究室の外まで避難する。上司が体を震わせながら、言葉を絞り出した。
「恐ろしい…たしかにばけものじゃ。人間には想像もつかないような…。」
この事件は世間にも報道され、新聞には
「医大実験所でばけもの現れる」「現代の怪異、動物実験のたたりか?」などと紙面を飾る。
そして夜。
助手は実験所で一人見回りをしながら考え事をしていた。
「どう考えてもあれは人間の想像を絶したかたちをしている。」
そしてふと、自分があのばけものに見覚えがあることに思い至る。
「そうか!犬小屋だ!!」
助手が足を犬小屋へと向けた瞬間、茂みから気配を感じた。
ばけものが走り寄ってきた。
ばけものの殺意が半端ないね。
犬にやさしくて同情的だった同僚を真っ先に襲うあたり、
何か思うところがあったのかも?
コイツだけは生かしちゃおけねぇ!
まとめ
以上、楳図かずお先生のばけものでした。
研究者たちは愛情込めて犬たちを育てている(多分)。しかし、それは動物実験で使用するためで、しかも相当に高い致死率を誇るヤバい実験。
何も知らないお気楽わんこは、今日も元気にシッポを振る。一方、何のために自分たちを育てているのかを察している鋭いわんこからは、めちゃくちゃヘイトを稼いでいる。
そしてそのヘイトが形になって現れた時、人間には想像もつかないばけものとして登場する。
人の憎しみが~、というのは見ますが、わんこの憎しみが~、というのは面白いテーマですね。
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