人類滅亡の危機に立ち向かった男の物語。
しかし、彼の努力は実を結ばないし、むしろ人類を窮地(きゅうち)に追い詰めかける。
そんな終末SFに興味はありませんか?
楳図かずお先生の笑い仮面では、日本各地にアリの姿をした赤ん坊が生まれます。それは未来の異常気象を察した人類が、絶滅を避けるために進化した姿だった。
天文学者・式島博士は人類滅亡を回避するため、アリ人間の研究を開始。
ところがある日、実験用のアリ人間を逃がしてしまい、村は大混乱に…。
- 監獄からの脱出劇
- 後半からの笑い仮面がカッコいい
- 終盤の展開が○
- 笑い仮面の出番が少ない
- 人類滅亡の危機が解決せずに終幕する
概要
序章のあらすじ
1940年。アリの様な風貌(ふうぼう)を持つ赤ん坊が、日本各地で生まれる。
式島博士は十年周期で起こる太陽黒点の出現と、アリの様な赤ん坊(アリ人間)の出産数に明らかな相関があると発表。
同時に次々回の太陽周期では大黒点が出現し、人類は滅亡の危機に瀕することも発表する。
しかし、日本軍部はこの発表を問題視。式島博士を収監&拷問にかける。
その際、笑い仮面と呼ばれる鉄仮面を取り付け&溶接するという刑罰を与える。
式島博士はそのまま監獄島へ送られるが、そこで生物学者・南博士と出会う。
南博士もアリ人間の研究をしたという名目で収監されたのだという。
二人はお互いの研究成果をすり合わせる。
その結果、人類は滅亡の危機にあり、それを回避するためにアリ人間へ進化したのだといいう結論に達した。
南博士は自身の研究成果のすべてを式守博士に託し、監獄島からの脱出をサポート。
島から逃れた式島博士は、ある村に屋敷を構え、人類救済の研究を開始する。
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拷問がえぐい!
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喰らえっ、笑い仮面の刑!
登場人物
式島博士
前編の主人公。後編からはダークヒーロー・笑い仮面として登場。情熱的なナイスガイ。太陽大黒点による人類滅亡を防ぐために、自身のすべてをささげる。が、失敗する。嫁がとても美人。
南博士
監獄島に閉じ込められていた生物学者。式島博士と出会い、人類滅亡を確信。それを防ぐために、自身の命をかけて、式島博士の脱獄をサポートする。仮面をつけているため表情はわからないが、ひょうきんな印象を受ける。
五郎
後編の主人公。胸元に「5」と描かれたシャツを着る少年。笑い仮面と出会い、なにかと絡むようになる。終盤では協力してアリ人間退治を行うが、笑い仮面の攻撃に巻き込まれてしまい、土砂に埋まる。あはれ…。
マリ
五郎の友人。黒髪ロングにツリ目の少女。五郎との散歩中、アリ人間に拉致されてしまうも、自力で生還。しかしそれ以降、様子が怪しくなる。最終盤、自身の命も本能さえもかなぐり捨てて、五郎の救出にあたる。
後編の内容
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すまん、アリ人間、逃がしたわ
太陽大黒点(≒人類滅亡)まで残り二年。
式島博士(=笑い仮面)は、アリ人間の強靭(きょうじん)な性質を、一時的に人間へ宿らせる研究を完成間近まで進める。
ところがある日、実験用のアリ人間が屋敷から逃亡。村に住む少女・マリを誘拐し、坑道の奥に隠れてしまった。
笑い仮面はレスキュー隊と協力し、マリ救出に向かうも落盤(らくばん)発生により失敗。
これにブチ切れた村民は、笑い仮面の屋敷に放火。
研究成果のすべてが燃えてなくなってしまう。
「何もかもおしまいだ」
笑い仮面は、そう言い残して姿を消してしまう。
数日後、アリ人間に誘拐されていたマリが帰ってくる。
しかし、どこか様子がおかしい…。
それから間もなく、村民が「カイブツ」に襲われる事件が発生。
村の少年・五郎は、事件現場で服の切れ端を見つけ、カイブツの正体が人間なのではないかと推測。
調査を続ける五郎だったが、襲撃を受けて空井戸に落とされてしまう。
五郎を襲ったのは、カイブツに襲撃を受けた村民。
彼らの姿はアリ人間のそれと化していた…。
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村民にとっては、怪しいやつが怪しい研究をしていたせいで、犠牲者が出たんだもん。
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博士も事前に説明しとけばよかったのにね。
っていうか逃がすなよ!
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博士は物語が進むにつれ、段々やけっぱちになっていくよ。
アリ、絶対許さない
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五郎は空井戸の底で、事件現場で拾った服の切れ端をじっと見ていた。
持ち主に心当たりがあったから。
と、正義の味方・笑い仮面参上!五郎を空井戸から救い出してくれる。
そして村にいる人間を裏山へ避難させてほしいと頼んでくる。五郎はこれを快諾。
急ぎ村へ戻るも、すでに村はアリ人間だらけになっていた。そこへマリがやってくる。
「逃げましょうアリ人間になった村人たちがわたしたちをつかまえにやってきたのよ」
そう言って、裏山の笑い仮面の元へ避難する。
そこで笑い仮面が見せてきたのは爆弾。村に仕掛けた爆弾でアリ人間を一挙に全滅させるのだという。
それを聞いて顔色を変えるマリ。
「待ってください、待って!」
必死の訴えをガン無視してスイッチオン。ドカーン!
さらに笑い仮面は懐(ふところ)から拳銃を取り出し、マリに突きつける。
「おまえもアリ人間だ!」
驚愕(きょうがく)とも、絶望ともとれる表情をするマリ。
「わたしは違う信じて!」
笑い仮面はマリを撃った。
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アリ人間を全滅させたら、人類も滅びるじゃん。
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アリ人間は非常に好戦的だったんだ。しゃーない。
![](https://always-myroom.com/wp-content/uploads/2023/05/897dd329ac5dfedbbd5f2d108ba23647.jpg)
いま滅びるか、二年後に滅びるか…。
どないせいっちゅーねん!
恐怖の要素
![怖がっている女性](https://always-myroom.com/wp-content/uploads/2023/07/7a7b7a12c88fc48cbd1f6e76e432dd6b.png)
不気味なダークヒーロー
本作のヒーローである笑い仮面。
彼の正義感は作中随一だし、ムチを使った戦闘シーンもカッコいい。
しかし、常に笑顔を浮かべたその表情は、やっぱり不気味。
子供を救出するとき、自分の研究が失敗に終わったとき、アリ人間に囲まれて絶体絶命になったとき。
すべてのシーンで、不気味な笑顔を浮かべ、本人の表情が全く分からない。
正義のヒーローが全編を通して不気味、というのが本作最大の恐怖だと思います。
笑い仮面誕生の瞬間
笑い仮面は式島博士への拷問の一環で誕生したのですが、このやりようがなかなか怖い。
博士を殴る蹴るでボコボコにし、そのうえで取り出したのが金属製の仮面。
これを博士にかぶせてから火で焼く、というえらい拷問。
絵のグロさや、博士の苦しみっぷりも凄惨ですが、これが一生取り外せないというのも恐怖をマシマシにしてきます。
人間の闇と怖さ
楳図先生の作品でしばしば目にする、「人間が一番怖い」というもの。
本作でもその気が強いです。
「人類が滅ぶ?そんなの知らねえよ!」と、科学者一同に拷問をかまし、監獄島に叩きこむ日本軍。
博士の屋敷からアリ人間が脱走するや、屋敷ごと焼き討ちする村人。
そして当の博士も、研究が失敗したとみるや、村ごと爆破してすべてを無かったことにしてします。
人間の怖さというものが垣間見えますね。
感想:笑い仮面がかっこいい
読了して思ったのは、「笑い仮面がかっこよかったなあ」ということ。
式島博士も笑い仮面も、人類を守るという同じ目的を持っているにも関わらず、笑い仮面の方が魅力的に思えた。
博士の方は情熱が表情にも出ていて、顔を見るだけでも何を考えているのか、どんな人物なのかが何となく察せられる。
一方の笑い仮面は、同様に情熱的なのだが、表情が全く分からない。
怒っているのか?
泣いているのか?
ただ、行動で表すのみ。
人類を助けようとしたり、子供の救出に奮闘したりなど。
やっていることは同じなのに、ミステリアスで不気味な感じが、とてもかっこよく見えてしまう。
「秘すれば花」
と、いったところかもしれない。
まとめ:やけっぱちだけど、そこがいい
以上、楳図かずお先生の笑い仮面でした。
人類滅亡の危機を察した式島博士は、南博士の遺志を継ぎ、人類をアリ人間のように強靭化するという研究を進めていきます。
タイムリミットまで残り二年。
研究完成までの見通しが立ったころに、やらかしてしまい、村一つを地図上から消滅させてしまいます。
それは研究中に、アリ人間になると狂暴化してしまい、むしろ人類を襲い始めるとかいう大欠陥が判明したから。
大欠陥が判明した後の笑い仮面は、もうやけっぱちになったようにアグレッシブ。
それまでの隠者のようなおしとやかさはなく、どうにでもなぁーれ、といった感じ。
でも、読んでいる側としては、やけっぱちになった笑い仮面の方が魅力的。
ラストは、アリの赤んぼうがどうなったのかとか、太陽大黒点がどうなったのかは描かれずに終幕。
そんな終わり方もアリなん、といったところでしょう。
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マリはね、五郎のことが好きだったんだ。
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