【ふたりぼっち、藤子・F・不二雄】友情と成長を描いたSF短編のあらすじ

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SF・ファンタジー

 自分の壁を破りたい、そんなジュブナイルな悩みはありませんか?

 藤子・F・不二雄先生のふたりぼっちが一助になるかもしれません

 主人公の少年は完璧超人の兄にコンプレックスを持ち、漫画家になりたいという将来の夢にも踏ん切りがつかず、好きな女の子に声もかけられないというシャイボーイ。

 そんな少年の目の前にもう一人の自分が現れます。パラレルワールドからやってきたという彼は、悩みも将来の夢も少年と全く同じ。

 二人はお互いに悩みを打ち明けあったり、将来の夢だった漫画を協力して描き始めたり。二人は心からの親友になります

 少年は新しい世界がひらけてきたような気がしたのですが…

面白かったところ
  • 心の奥底から打ち解ける二人は、ほほえましい
  • 全く同質の二人でも、道をたがえるというのは興味深い
イマイチだったところ
  • 主人公が隠し事?をするのにヤキモキする
  • 相方が隠し事をするのが少し悲しい

概要

あらすじ

 主人公・健二の目の前の空間から、突如もう一人の自分が出現する。本人いわく

 「まさしくぼくそのものだった。

 どうやらパラレルワールドからやってきたらしい。

 健二自身も興味から、あちらの世界(パラレルワールド)へと行ってみる。同じ部屋・同じ本、同じ家族。まさしくパラレルワールド。

 一方で違っているところもあった。こちらの世界では、事故で亡くなった犬が元気に走り回っていて、計画倒れしたマンションが堂々建設されている。

 それを見た健二は

 「こまかな違いも時間がたつにつれてだんだんと違うものになるだろうね。」とメタ発言。

 途中、クラスメートの高嶺花子の自宅前まで来ると

 「ぼく、あの子すきなんだ

 「ぼくだって

 と、恋バナをし、学校でのグチを言い合い、二人は意気投合する。

 健二はその日の日記に、心からの友人を持ったことと、自分はもうひとりぼっちではないということを書き込む。いわく、

 「新しい世界がひらけてきたような気がする。

心の友よ!

お前のような心の友がいるか?

…。

登場人物

健二
 今作の主人公。もう一人の自分と出会い、友情をはぐくんでいく。しかし、やや上昇志向が強く、相撲(すもう)に勝つためのトレーニングを開始。世界とのズレを拡大させることになる。もう一人の自分にNTRをかます

もう一人の自分
 パラレルワールドから来た、もう一人の健二。性格や能力が本人と同じため意気投合、お互いに友情を深めあう。しかし、気遣い下手も同じだったため、次第にぎくしゃくした関係になってしまう。

高嶺さん
 ダブル健二の思い人ふんわりショートがかわいい。パラレルワールドの高嶺さんは愛犬と楽しそうに散歩したり、ダブル健二とお駄弁(だべ)りしたりと明るい性格。一方、現実世界の高嶺さんはセリフが一切なく、健二が描いた似顔絵もスルーしたりと性格がよくわからない。

物語の内容

友情とともに、ライバル心が…

 出会ってからというもの、毎日行き来するようになる二人の健二

 学校から出される宿題の内容が同じだったことから、作業を分担。結果、能率が爆上がりし、「勉強もおもしろいもんだな」と思い始める。

 また雑談の最中、漫画家になることが将来の夢だと告白すると、もう一人の自分がぼくも同じだと答える。

 そこで二人の合作にすればきっとはかどるし、面白そうだということで、協力して漫画を描くことになる。漫画作成は良くはかどり、しばしば深夜にまで及んだ。

 時には遊んだりもしたが、思考や腕力が同じなので、ボードゲームではなかなか決着がつかず、相撲を取るとこれまた決着がつかなかった。

 このころから、健二は相手にライバル意識を持つようになった。そして身体を鍛え始める。いわく、

 「あいつをぶん投げてみたかった。」

 そして異変が起こり始める

 以前はピタリと合っていた宿題の内容が合わなくなった。次いで、二つの世界をつなぐトンネルが狭くなった。

 二つの世界がずれ始めてきた…

あいつ

物語が進むにつれ、相方の呼び方が変わってきたね。

ふたりぼっちから、ひとりぼっちへ…

 健二が身体を鍛えるために始めたジョギングは長続きし、相撲でも勝ち越すようになってきた

 その日も町内一周して帰宅しようとすると、が2Fの窓からこちらを除いていた。

 顔を合わせると、「かくしたわけじゃないけど。」という健二。

 彼も「いいよ、べつに。」と返事するのだが、なんとなくギクシャクする。

 別の日には、健二があっちの世界へ行くと、彼と高嶺さん(二人が片思い中の女の子)が仲良くお駄弁りしていた。

 しかし、彼は健二にそのことを全く話さなかった。二人の間にしこりが残った

 そしてついに、決定的な日が訪れる

 その日も健二があっちの世界へ行くのだが、彼は留守。

 そして机の上に日記帳が置いてある。健二はそれを読んで愕然(がくぜん)とする。

 彼と高嶺さんは想像以上に、ずっと親密な仲になっていた。しかも彼は、そのことをおくびにも出さなかったのだ。

 と、玄関のチャイムが鳴る。やってきたのは高嶺さん。彼を訪ねてきたのだが、健二はお構いなしに部屋へ案内する。

 健二のなれなれしい態度を気にするそぶりもなく、高嶺さんはニコニコとおしゃべりを始める。

 そして健二と高嶺さんは時間がたつのも忘れて、楽しいひと時を過ごす

 ドアの隙間から彼が覗いているのも気づかずに…

 その日の夜遅く、彼が健二の部屋にやってくる…。 

自分自身にNTRを喰らうとは…。

新しいジャンルを開拓したよ。

感想:パラレルワールドの自分は他人か?

 F先生は「自分は他人の始まり(自分会議)」と言っていますが、今作はまさにそんな感じ

 性格も能力も同じで、意気投合していた健二たち。

 それがジョギングを始めたり、ヒロインと仲良くなったりという、少しの違いから道を分かち合ってしまう。

 「ともに学ぶことはできても、ともに進むことはできない(意訳・論語)」

 という言葉がありますが、それを物語にした感じ。

 「自分は他人の始まり

 言い得て妙ですね

まとめ

 以上、藤子・F・不二雄先生のふたりぼっちでした

 主人公・健二はいろいろな悩みを一人で抱えていた。

 そこへパラレルワールドからやってきた、もう一人の自分と遭遇。彼と悩みを共有し、将来の夢にも協力して取り組む。心の友よ!

 しかし、ライバル心が湧き始めてからは関係がぎくしゃくしてくる。

 そして破綻

 健二はまたひとりぼっちに戻ってしまう

 が、壁は破けた

 F先生が言うところの「自分は他人の始まり(自分会議)」を、体現した作品だったと思います。

 自分会議ではブラックユーモアを交えて、ふたりぼっちでは青春を交えて。

 後味(あとあじ)では、今作の完勝でしょう。



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