ダークな藤子・F・不二雄先生が好みなら流血鬼がビビッと来るはずです。
バルカン半島で発生した、吸血鬼病が日本に上陸。感染爆発から生き残った少年は、木の杭を片手に吸血鬼たちと対立。
しかし、吸血鬼と対話する機会を得た少年は、むしろ彼らから非難される。
「安らかにねむっている人の胸に杭を突き刺すなんて!あなたたちは流血鬼よ。」
本作では、お互いが正義を強弁すれば、いずれぶつかり合う。そんなことを教えてくれます。
概要
あらすじ
開幕するや、男性の胸を杭で突き刺して殺害する少年。少年はそのまま山中に逃げ、洞窟へと入っていく。
中には眼鏡をかけた友人がおり、缶ジュースを取り出してくれる。
「初勝利を祝って乾杯をしよう。」
「気にするな。相手は人間の形こそしているが、怪物なんだ。」
と、気落ちしている少年にフォローしてくれる。
事の始まりはバルカン半島のルーマニアで発生した奇病。病死したはずの人間が復活し、夜な夜な市民を襲撃。襲われた人もしばらくすると発病してしまうという。そんな奇病が欧州・アメリカ、そして日本にまで感染を拡大させる。
少年が住む町でも感染爆発を起こすが、ちょうど少年と友人は釣りに出かけており、感染を免れた。
それ以降、二人は子供のころからの遊び場・秘密の洞穴で身を隠して暮らす。
いつか助けが来ることを願って…。
バイオハザードしてますねぇ。
吸血鬼は生前の記憶を持っていて、社会生活もしているよ。
ゾンゾンしてきた!
登場人物
少年
今作の主人公。序盤で吸血鬼をしとめるも、良心の呵責に悩まされる。その後も踏ん切りがつかないまま、幼馴染と対決。幼馴染をロープでしばる性癖の持ち主。
幼馴染
少年の幼馴染。ショートヘアーの女の子。「吸血鬼病になったら自○する」と言っていたが、いざ発病すると少年にも感染させようとしてくる。かたくなに拒否する少年に対し、「しばってもいいわ」とか言ってくる聖女。
友人
少年の友人。日和(ひより)まくっている少年とは逆に、即断即決を心掛けている頼もしいやつ。いい奴ほど先に逝く、を体現している。
物語の内容
探索失敗
ある夜、遠くから聞こえる犬の鳴き声で目が覚める二人。声の正体は吸血犬。二人の捜索に来たらしい。
「もうここも安全なかくれ家じゃなくなったな。」
そして翌朝、二人は吸血鬼の活動が鈍る日中に町へ繰り出す。目的は情報収集。
今、世界はどうなっているのか、人間の生き残りはどのくらいいるのか。
二手に分かれて探索を開始する。
少年は先ず自分の家へと向かう。懐かしさがこみあげてくるものの、雨戸が閉まっていて中には入れない。
と、その時。遠くからパトカーのサイレンが聞こえる。行ってみると友人が警察官(吸血鬼)に囲まれている。
友人は銃撃を受けて倒れてしまった。
「くそーっ!」
涙を流しながら洞穴へと走りかえる少年。
ところが、洞穴内部の明かりがついている。そこにいたのは幼馴染の少女だった。
赤い目と青白い肌を持つ、吸血鬼になり果てた幼馴染の少女だった。
拳銃を持った警察官のゾンビ。SIRENを思い出すね。
ネイルハンマーがあれば勝ててた。
吸血鬼VS流血鬼
「吸血鬼!」
少年は幼馴染の胸に杭を突き立てる。
相手は少し困ったような顔をした後、バスケットを取り出し
「おべんとうもってきたの。」
と言って、テーブルの上にパン・フルーツ、熱々のコーヒーを並べる。腹ペコだった少年はそれらをばくつく。
そして二人で子供のころの話に花を咲かせるも、幼馴染が不意に顔を近づけると少年は椅子から飛び跳ねる。
「近よるな。きもちわるい!!」幼馴染涙目。
少年は幼馴染をロープで柱にぐるぐる巻きにしばる。すると少年も余裕が出てきたのか
「なにが目あてなんだ?」
と質問を投げる。彼女の答えは
「あなたの血を吸わせてほしいの。あなたをこんなみじめな境遇から救いだしたいの。」
と、なかなか怖いことを言い出す。
続けて新人類(吸血鬼)がいかに優れているのかを説き、旧人類(普通の人間)世界は既に終わったのだと言ってくる。
「吸血鬼の仲間にいれてくださろうってのか!」
と、あざける少年に対し、
「わたしたちを吸血鬼とよぶならあなたたちは流血鬼よ。安らかにねむってる人の胸に杭を突き刺すなんて!」
二人の話は平行線に。そしてタイトル回収。
と、外から人の声が聞こえてくる。
そこにはパトカーに乗った警察官(吸血鬼)が何人も来ていた。
「仲間を手引きしたのか!」
直後、幼馴染は少年にとびかかってきた…。
…、ベッドの上で意識を取り戻した少年。
そこには、明るく優しい光に満ちた世界が広がっていた。
作中、少年は三回も幼馴染に木の杭を向けるけど、結局一度も刺せなかったね。
そして四回目には相手がひるまず、普通に襲ってきたと。
どうすれば良かったんだよ!
感想:この結末はバッドエンド?ハッピー…?
日本に上陸した吸血鬼病。少年と友人は木の杭を持って奴らに対抗する。人間を装い、人間を襲撃する吸血鬼たち。
しかし、幼馴染(吸血鬼)は善良な市民を杭で突き刺すなんてひどい!と憤(いきどお)る。
さらに、あなたを優れた新人類に進化させてあげる。と言って、吸血鬼のお仲間に入れてくださろうとする。
異形の怪物を全滅させて、めでたしめでたし。にしない所が本作の妙。
みんなが幸せそうなら、それでいいじゃない!
う~ん、バッドエンド寄りのハッピーエンド、なのかなと。
まとめ
以上、藤子・F・不二雄先生の流血鬼でした。
バルカン半島で吸血鬼病が発生。
人間を吸血鬼化させる奇病は、欧州・アメリカ、そして日本にまで感染拡大。
感染を免れた少年と友人は、子供時代の遊び場だった洞穴に隠れ住む。
しかし、友人が吸血鬼に捕縛。
同時に、少年の元には吸血鬼化した幼馴染がやって来る…。
バッドエンドかハッピーエンドなのかは、難しいところ。
藤子・F・不二雄先生の黒いところが現れた作品でした。
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