故郷、青春時代、ノスタルジーを感じる要素は人それぞれでしょう。
藤子・F・不二雄先生のノスタル翁は、ある男のノスタルジーを描いた作品です。
太吉は名家の息子で、幼いころから仲良しの許嫁・里子がいます。しかし、思春期になると素直になれなくなってしまう。
やがて、太平洋戦争が勃発。太吉は、里子に再婚するよう言い残して出兵する。
そして終戦。
太吉が帰郷すると、里子は再婚しないまま亡くなり、故郷はダムの底に沈んでいた。
概要
あらすじ
太吉は、許嫁の里子と仲良しだった。
しかし、当時は太平洋戦争中。太吉は里子に、もし自分が戦死したら再婚してほしい、と言い残して徴兵されてしまう。
やがて終戦を迎えるも、太吉は帰国が遅れてしまう。
頭の中で里子の声が繰り返される。
「まってます。いつまでも。」
「きっときっと帰ってね!!」
太吉は30年ぶりに帰郷した。
登場人物
太吉
名家の跡取り息子。徴兵されるも国外に置いてきぼりをくらい、帰国が30年も遅れてしまう。
里子
太吉の幼馴染で許嫁。太吉の帰国を待ち続けるも、再会を果たさずに亡くなる。
土蔵の翁さま
太吉家の土蔵に閉じ込められている翁さま。「抱けーっ!!」は作中一の名言。
翁さま…。
男は度胸!なんでもためしてみるのさ
物語の内容
ダムに沈んだ故郷
30年ぶりの故郷。
里子は既に亡くなり。故郷もダムの底に沈んだ。
おじさんいわく、村人たちはバラバラになり、土蔵の翁さまも里子を追うように亡くなったという。
里子が再婚せずに亡くなったと聞き、罪悪感を覚える太吉。
行けるところまで行ってみよう、と村に続く道を行く。
と、道の向こうから一人の子どもが、歌いながら歩いてくる。
ハッ、と息をのむ太吉。
そして子どもに抱きついた。
「里ちゃん!!」
太吉は通報された。
幼女に抱きつくのはあかんよ。
沈んだはずの家族と許嫁
太吉が連行されたのは、ダムに沈んだはずの実家。家族たちもいる。
父親に村から出ていくよう言われるも、太吉は拒否。村にとどめてほしいと懇願する。
そしてそのまま土蔵に閉じ込められてしまう。
土蔵の小窓から、小さかったころの里子と自分の声が聞こえる。
太吉は声に耳を傾け、ノスタルジーに身をひたした。
幸せになれましたか?
感想
石頭の太吉だが、中身がフニャフニャなのがヨシ!
里子大好きな太吉だが、お年ごろになるとツンデレ気質を発症。戦後、里子が再婚しなかったと聞けば、再婚させればよかったのにと怒り出す。もちろん本音ではない。
土蔵の翁さまも、ツンデレな太吉を見て「抱けーっ!!」と大声上げてますし。
彼のノスタルジーは青春のころでも、ダムに沈んだ故郷でもなく。里子にすなおだった子どものころにあったのかもしれません。
まとめ
以上、藤子・F・不二雄先生のノスタル翁でした。
幼いころは、すなおに話せていたのに、段々とそれができなくなっていく太吉。里子との最後の会話も本心ではなかった。
そして、里子と故郷を失ってから、もう一度チャンスが巡ってくる。
大切なものを二度と失いたくない。太吉はノスタルジーにおぼれていく…。
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