ミステリー仕立てのちょっとしんみりしたお話に興味はありませんか?
つばな先生の十字路の悪魔(第七女子会彷徨6巻)が、その興味を満たしてくれるでしょう。
ある日、一番の友達だったよっちゃんが交通事故で亡くなってしまいます。
よっちゃんの記憶はデータ化され、バーチャル世界でおしゃべりすることができますが、事故に遭った時の記憶が抜け落ちている。
さらにシチュエーション的に交通事故ではないっぽい。
そして明かされる、事件の真相とは…。
作中では十字路をpast(過去),present(現在),future(未来)って表現しているよ。
今、決断の時。みたいな意味かな?
何気に最終回の伏線っぽい話でもあるよ。
仲良しのよっちゃん、いきなり死ぬ
よっちゃんときよちゃんは仲良しこよし。が、冒頭でいきなりよっちゃんが死ぬ。
とはいえ、よっちゃんの記憶はデータとして残っていて、バーチャル世界・デジタル天国で本人のアバターが結構元気に過ごしている。
「昔は人が死ぬとお星さまになるなんて言われてたけど、今はパソコンの中にお引越しするみたいなもんだね。」
とか言ってる。人が亡くなるということを全く深刻にとらえていない。
今作の主人公二人も、
「急に死んだとか聞いて爆笑した。」
「泣けよぅ!(笑)」
と、スマホアプリ「天国」で笑いながらやり取りしている。
そんなおしゃべりをしていると、よっちゃんは亡くなった時の記憶を失っていることが判明。
きよちゃんは「もし故意に記憶が消されているんだとしたら、プライバシーの操作になる。」と言って、どこでどうやって死んだのかを調査するという。
一方のよっちゃんは自分の死因という重大ごとなのに、あまり乗り気ではない様子…。
事件の匂いがするよ。
よっちゃんが乗り気でないのが気になるね。
死因がおかしい
きよちゃんは、先ず学校の先生に死因を尋ねる。その返答は
「交通事故で亡くなったと聞いた。記憶がないのは事故の際に頭を強く打ったからじゃないのか?」というものだった。
それをよっちゃんに報告するも「それはおかしいですよ、探偵さん。」という返事。本人いわく
「当日は学校から帰ってきて、夕飯食べたりテレビを見たりして、夜8時ごろまでの記憶はある。普段の自分はそんな時間に外出なんかしない。どうやって事故に遭ったんだろう?…なんか、…変。」
次に探偵・きよは、よっちゃんの自宅へ行き、母親から何時ごろに事故が起きたのかを聞く。母親は
「夕方ごろに、…ケーキ屋さんの前の十字路があるでしょう?あそこ車の通りが激しいから。」
夕方ごろ…。よっちゃんの話と合わない。
そしてなにより、事故に遭ったというケーキ屋前の十字路には、事故を知らせる立て看板がない。スリップ痕も、ひしゃげたガードレールも花もない。
「そもそも交通事故なんて起きていないのでは?」
そう考えて逆毛立つ、きよちゃん。
その後、耳にした事件の真相は、実に陰鬱なものだった…。
ホラーかな?
そもそも、よっちゃん死んでるしね。
人生の十字路には悪魔が立つ
間もなく、今回の真相が飛び込んでくる。よっちゃんが亡くなった理由は交通事故ではなく、
一家心中
よっちゃん父は多額の借金を背負い、自宅には毎日取り立て屋が来ていた。追い詰められた父親は、嫁と娘を巻き込んで一家心中を図る。しかし、自分と嫁は失敗。娘一人だけが亡くなってしまった。
よっちゃんが失くしてしまったのは、それらの辛いつらい記憶。
きよちゃんは、この記憶喪失は「愛」だと考えた。よっちゃんがいるのは天国なんだから、辛いことは忘れて、幸せであるべきなんだと。
それと同時に父親に対する不満を爆発させる。大借金を背負い、迷いに迷って、人生の十字路に出くわした時、よりによって家族を抱え込んで地獄への道を突っ走っていったことを。
後日、よっちゃんはある決断を下す。記憶を失っていても、あるいは何かを感じていたのかもしれない…。
父親はとんでもない決断をしてくれたね。
きよちゃんいわく、死ぬなら一人で死ね。だって。
一人はさみしいもん。仕方ないよね。
仕方なくなくない?
まとめ
以上、つばな先生の十字路の悪魔(第七女子会彷徨6巻)でした。
ある日、仲良しのよっちゃんが交通事故で亡くなってしまうも、当の本人(のアバター)はデジタル天国でいたって元気。悲壮感がなく、きゃっきゃっうふふしてるのは、ほほえましいです。
そして記憶喪失なのをきっかけに事故について調べていくという謎解きミステリーなストーリーは、先が気になる展開で面白かったです。事の真相もインパクト・大でした。
しいて言えばラスト、二人の決断と決心がなんでそうなったのか、よくわからない。いえ、少しはなんとなくわかるような気もするんですけどね。
金やんと高木さんは登場しませんが、第七女子会彷徨の中でも特に面白い話だと思います。
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