地球が消滅します。でも、あなたにだけ、助かる方法をお教えします。
500万円でいかがですか?
藤子・F・不二雄先生の箱舟はいっぱいを紹介します。
大山は隣人から500万円で自宅を買わないかと持ち掛けられます。その夜、ノア機構を名乗る人物が訪れ、ロケットの代金500万円を支払ってほしいと言ってきます。
全員を助けられないなら、取捨選択をするしかないじゃない。
しかし、見捨てられた方は、とんでもないわけで…。
概要
あらすじ
「500万円!?」
隣人の細川が時価二千万円の自宅を500万円で購入しないかと持ち掛けてくる。急に現金が必要になったらしい。
かねてマイホーム願望のある大山。妻に相談し、資金のめども付ける。
そこへ、ノア機構の連絡員を名乗る男が大山を訪ねる。巨大ロケットの完成が近くなったので、代金500万円を支払ってほしいという。
心当たりのない大山は連絡員を、そのまま帰す。
妻子が寝静まったころ、一人タバコをふかす大山。
「ひっかかるなあ…」
「なにか…」
二千万円が500万円に!?なんてお得なんだ。
詐欺だろ。
登場人物・用語
大山
妻子持ちのサラリーマン。細川の提案によろこぶも、疑問を持つようになる。
細川
大山の隣人。大山をだまして見捨てることに、後ろめたさを感じている。
総理大臣
日本の総理大臣。国民を取捨選択することに、罪悪感を抱いている。しかし、やる。
カレー彗星
地球に衝突する恐れがある彗星。3年前に発表され、世界を恐怖のどん底に叩き落とした。世界天文学会議が否定したことで、騒動は沈静化する。
物語の内容
彗星が衝突する?
大山の周囲では、カレー彗星が地球に衝突するという噂が、耳に入るようになった。大山の頭にはノア機構のことがちらつく。
これが確信に変わったのは、テレビ番組で彗星衝突が密告されたとき。
大山は細川が地球脱出ロケットの費用を工面するために、自分をダシにしたことに思い至る。
同時に日本中がパニックになる。デモ隊が国会に押し寄せる。
総理大臣が釈明に追われる。
「天地神明にちかって申し上げる。」
「彗星との衝突は断じてあり得ません!!」
政治家が言いそうなセリフだね。
箱舟がいっぱいだからしゃーない
大山一家は笑いながらテレビを見ていた。
カレー彗星衝突はデマであり、ノア機構はただの詐欺集団だったという。
細川は大山と顔を合わせるたびに、申し訳ない気持ちだったと謝罪。
大山も、その謝罪を受け入れ、今度家族ぐるみで旅行に出かけるという。
そのころ、官邸では総理大臣が頭を抱えていた。
「御時間でございます。」
総理と秘書が屋上のヘリコプターに乗りこむ。
「国内十六か所のシェルターのキャパシティーは四万人が限度です。」
「やむを得ませんでした。」
彼らを乗せたヘリが離陸する。
空を飛ぶ彼らを、大山の子どもが見送っていた。
カレー彗星、来るんか?
黄色くなりそう。
感想:「この箱舟、一人用なんだ。」
助けられるキャパシティーに限界があるとき、だれを選ぶべきか?
細川は、大山一家をベットにして、家族救済を選ぶ。
総理大臣は大多数の国民を見捨てて、選ばれた四万人だけを保護する。
そして大山は、自分の家族も助けられないと言って号泣する。善人っぽい大山が、一人の人間も助けられない。
とはいえ、たくさんの人間を助けている総理大臣が「やむを得ない」の一言で大多数の国民を見捨てるのも、なんともいえない。
終始、踊らされっぱなしの大山と細川があはれ。
まとめ
以上、藤子・F・不二雄先生の箱舟はいっぱいでした。
二千万円超の自宅を破格で売却するという細川。なにか引っかかる大山。
その後、地球脱出ロケットの費用工面のために自分がダシにされたと知り、大山は細川をぶん殴る。
しかし、すべてはノア機構による詐欺事件だった。
大山と細川は互いに謝罪し、仲直りの旅行に行くことになる。
めでたしめでたし…?
めでたくないぞ!
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