世間は1mmも変わっていないのに、自分が見える風景は180度変わってしまった。
そんなお話、藤子・F・不二雄先生のテレパ椎(しい)。
自称・イラストレーターの梨男は、いろいろな人に助けられてきた。彼が困ったとき、先輩や友人たちは嫌な顔一つせずに手を貸してくれた。
「みんなみんないい人ばかりだ」
ある日、テレパ椎を拾う…。
概要
あらすじ
梨男は人に恵まれていた。
友人の与脇夫婦は、いつ立ち寄っても歓迎してくれる。居候(いそうろう)中の弟カップルはラブラブで、相思相愛のように見える。
ある日、梨男は出来上がった仕事を持って出版社に向かった。
途中、丘の道で少し大きめの椎の実を拾う。なんと、それを持っていると他人の心が読めるようになった。
「こいつはすばらしい!!」
「人の心の底を読めるなんて」
梨男は足取り軽く、出版社に向かう。
しかし、それはすばらしくも、なんともないことだった…。
テレパシー?
テレパ椎だよ。
登場人物
梨男
自称・イラストレーター。両親の反対を押し切って、この仕事に就く。全く売れていない。
与脇夫婦
梨男の友人夫婦。スキあらば梨男が家に来る。
弟カップル
梨男の弟とその彼女。両親に、結婚の意思を伝えるも反対されて家出。現在は梨男のアパートに居候中。
物語の内容
他人の本心、こわい
出版社に到着。
さっそく、出来上がったイラストを担当者に渡す。
「期待していますよ」
そう言う担当者。しかし、彼の本心が聞こえてくる。
「見こみはないがはっきりいうのもかわいそうだし…」
思わず、書き直してきますと言って席を立つ梨男。
その足で与脇夫婦の家に行く。夫婦はニコニコ笑顔で出迎えてくれた。イラストが没になったことにも、励ましの声をかけてくれた。
しかし、本心は違った。梨男は、そこそこに帰宅。
アパートでは弟カップルが、お互いの愛について語り合っている。
それを聞いていた梨男は、そっと表に出る。
きれいな星空が広がっていた。
こんなに苦しいのなら、テレパシーなどいらぬ!
建前に浸かっていた自分
梨男は星空を眺めて思った。
もし人類がテレパシー能力を持っていたら、群れを作ることはなかっただろう。社会や文明も誕生しなかっただろう。
梨男は一度アパートへ戻り、弟カップルの服のポケットに、テレパ椎をしのばせた。
まもなく弟カップルは喧嘩をはじめ、それぞれ田舎に帰ってしまった。
梨男は丘にのぼり、テレパ椎を粉々に砕いて捨てた。
町を見下ろす。
これまでとは違う、町の風景があった。
弟カップルw
じゃまだったからしゃーない。
感想
梨男の見る風景が、おおきく変わってしまうのが印象的だった。
前半では、他人の厚意を疑いもしない、お人よしの梨男。
それがテレパ椎を拾ってから、徐々に変わっていく。親切だった友人夫婦の本心、相思相愛だった弟カップルの本心。
それでも他人を恨むまいと、心に決める梨男。
気が付けば、世界は少しも変わっていないのに、彼の見る風景は大きく変わっていた。
妙味のあるお話でしたね。
まとめ
以上、藤子・F・不二雄先生のテレパ椎でした。
他人の親切を疑わない梨男。
ある日、他人の心が読めるテレパ椎をゲット。ここでも、すばらしい!とよろこんでいる。
しかし、それはちっとも、すばらしくなくて…。
梨男のこれからが気になりますが、生来のお人よし。きっと何とかなるのでしょう。
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