魔法も奇跡もあるけれど、平和な日常がゆるゆると続いていく。そんな作品に興味はありませんか?
双見酔先生の、魔法少女なんてもういいですから。をおすすめします。
本作はコミック アース・スターで三年間にわたって掲載され、アニメ化もされました。略称はまほいい。
主人公・ゆずかはゴミ捨て場で謎の小動物・ミトンと出会い、魔法少女になります。
しかし、世界侵略を狙う巨悪は既に倒されていて、ゆずかとミトンがやるべきことは特にない。
魔法の出番もほぼなく、友人のちやや真冬、そしてミトンたちとの平和な日常が描かれた作品になっています。
概要
あらすじ
かつて魔法少女たちと、そのパートナーは世界を守るための戦いに身を投じていた。
そして、戦いは魔法少女側の勝利に終わり、世界は平和になる。
使命を終えた魔法少女たちは普通の女の子に戻り、パートナーともお別れ。
数年後、平和な日々が刻まれる中、恥ずかしがり屋なゆずかはゴミ捨て場で何かを発見。それは謎の小動物・ミトン。
ミトンは「ぼくと契約して魔法少女になってよ」的なことを言って、ゆずかを勧誘。
巧みな話術に負けたゆずかは、魔法少女になり、ミトンとパートナーになる。
特に意味も目的もない、魔法少女としての生活が始まる。
ゆずかは同級生のちや、魔法少女仲間の真冬とともに、日常にちょっと不思議をプラスした日々を過ごす。
特に平和を脅かす敵が現れることもなく、重大な事故が起こることもない。
彼女たちのゆるゆるとした日常が続いていく。
登場人物
ゆずか
本作の主人公。家族や友人に対しても敬語で話す女の子。水の魔法を使えるが、日常で役に立ったことはない。ミトンのセクハラに強い怒りを覚えている。
ミトン
ゆずかのパートナー。かつて世界を救った魔法少女パーティーの一員で、治療を担当したスゴイ奴。しかし、戦いの無くなった世界ではやることがなく、ゴミをあさって生きぬく。デリカシーは置いてきた。
ちや
ゆずかと同い年の友人。ジト目が可愛い女の子。魔法少女の素質があり、ミトンのことを視認できる。ミトンのセクハラを見るたび、怒りに震えている。
真冬
ゆずかより年上の友人で、魔法少女の先輩。半分閉じている目が可愛い女の子。作中で魔法少女の定年を迎える。喫茶店主の孫で、彼女が入れるインスタントコーヒーは絶品。
ポチ
真冬のパートナー。かつて世界を救ったパーティーの一員。障壁を作成する能力を持ち、主に足場として運用する。ミトン同様、平和な世界ではやることがなく、ゴミをあさって生きてきた。
初めての出会いがゴミ捨て場とは…。
戦いが無くなれば、勇者もただの人さ。
最終回の内容
ミトンたちとの別れ?
ゆずかとちや、あとミトン。いつも通りの下校風景。
と、ミトンの元へメッセージが届く。
内容は、ミトンやほかのパートナーたちが元いた世界へ還れるようになったとのこと。
そして一度還ると、ゆずかたちの世界へは戻ってこれないこと。
突如やってきたパートナーとの別れに動揺するゆずか。
それに対し「色々と悩むのは、ミトンに詳細を聞いてからのほうがいい」と言ってフォローしてくれるちや。
週末、ゆずかの家でちややパートナーたちが集まる。そしてミトンたちが一週間後に元居た世界に還ることが決定。
ミトンと別れる。
ゆずかが目に涙を浮かべながら言う。
「送別会。しないとですね。」
ミトンが返事をする。
「そういえば言ってなかったね。僕は皆と一緒には行かない。ここに残るよ。」
そのとき。
場は凍り付き、ゆずかとちやの顔から微笑みが消えた。
魔法少女なんてもういいですから
ミトンはゆずかの魔法少女期間が終わっていないから、その定年まで一緒に居ると言う。
いわく、魔法少女でいる時間は魔法少女にならなかった場合に得られる様々な経験と時間を犠牲に成り立っている。僕らの都合で放置していいものではない。
「僕は。僕よりも、ゆずかが大事だからね。」
そして別れの時。
一行は夜の広場に集まる。
夜空からキラキラと光が舞い降りて、還るためのひずみが出現。
ほかのパートナーたちが続々とひずみに入っていく中、一人残るミトン。
突如、ゆずかがミトンをつかみ、ひずみの中へ放り込んだ。
ひずみから脱出しようとするミトン。
「ゆずかにはまだ魔法少女としての期間が残って…。」
そんなミトンに、ゆずかがもっと自分自身のことを考えるよう伝える。
「魔法少女なんてもういいですから」
「魔法少女なんてもういいですから。」ってこういう意味だったんだね。
タイトル回収する漫画は、良い漫画。
感想とエピローグ
お互いを思いあう気持ちは本物
終始、日常系コメディなものの、ゆずかとミトンの仲がちょっとずつ良くなっているのがグッド。
初期のゆずかはデリカシーがなくセクハラ三昧なミトンに対し、たわしで削ったり、水に閉じ込めたりと中々のパワープレイを見せていました。
それが話を進めるにつれて、ミトンへのあたりがやわらいでいき、後期では“ミトンと自分は友人なのでは?”とか思うようになる。
一方のミトンはセクハラがひどく、ほかのパートナー仲間からも軽蔑を買うレベル。
ところが、最終回では自分よりもゆずかを優先するという、意外な漢(おとこ)っぷりを披露する。
ミトンを毛嫌いしているちやも覚悟を決めているのならと引き下がり、仲間たちも気持ちはわかると譲歩。
しかし当のゆずかが大反対。
ちやと一芝居をうってひずみへ投げ込み、ポチ君も真冬の最後の願いだからとそれに協力。
微妙な仲だった二人が、お互いがお互いを思いあう関係になる。
素敵ですね。
ミトンの最後の言葉は、普段のデリカシーのない彼からは思いもつかないようなカッコいい言葉。
一応、世界を救ったヒーローなんだなぁ、と。
あと本当にゆずか優先なんだなぁ、と。
最後の最後に漢を上げた感じでしたね。
エピローグについて
単行本では描きおろしエピローグが追加されています。
内容は、ミトンと別れ、ゆずかたちが進級してからのお話。
定期的に真冬の喫茶店に集まっているようで、ゆずかとちやが新作スイーツの話をしている。
と、そこにアニオリキャラのだいやが登場。金髪ツインテールで可愛い。
また魔法少女の衣装も披露してくれ、こちらはネコの着ぐるみで可愛い。
同時にゆずかの新衣装も披露され、こちらはスク水ニーソにパワーアップ。
ストーリーらしいストーリーはないが、めでたしめでたしなオチがついて終幕していく。
スク水ニーソって…。
ミトンが露出が減るよう改良してくれたんだ。
セクハラじゃねーか!
まとめ
以上、双見酔先生の魔法少女なんてもういいですから。原作・最終回のあらすじ・感想でした。
本作は魔法少女ものですが、“巨悪と戦う女の子”というステレオタイプではなく、独特な世界観で描かれています。
ミトンが「危険はない」と言っていた通り、戦闘シーンは全く描かれず、ゆるゆるとした日常系コメディがメイン。
最終回でも、ゆずかが魔法少女になったことを、「大切な友達ができた」と述懐しています。
世界が平和になった後の魔法少女もの、という新鮮な見せ方をしてくれる作品でした。
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